日本世間学会設立の呼びかけ
日本が「封建制」を脱し「近代化」がはじまってから、およそ100年以上がすぎた。わが国においては、もともとSocietyの翻訳語であった「社会」という言葉がふつうにつかわれるようになった。
しかし依然としていまでも、なにか不祥事があった場合のお詫びの言葉は、「社会に迷惑をかけて申し訳ない」ではなく、「世間に迷惑をかけて申し訳ない」である。阿部謹也さんが鋭く指摘するように、わが国には世間は存在しても「社会」は存在しない。
つまり私達は、いまだ世間を離れては生きてゆけないような存在である。
「社会」を対象化し、学問として語ることはできても、年賀状を出したり、お中元やお歳暮をすることの意味に思いを馳せる人間がどれほどいるだろうか。
考えなければならないことは、わが国の「社会」の解明にとって、世間の解明が前提であるということである。世間はわが国では「隠された構造」としてあるが、しかし、それは依然として「謎」のままになっている。
日本には「社会」にかんする学会は存在しても、世間にかんする学会は存在しない。
この不思議さは、学問がもともと西欧からの輸入品としてのみ展開されてきた事情を考えあわせても、世間をきちんと対象化し、それを冷静に論じてゆくことがたいへんむずかしいことを意味している。
この「隠された構造」に光をあてるのが、この学会のさしあたりの目標である。大事なことは、それが同時に、自らが存在する「基盤」(実存)をゆりうごかすことになるということである。
学会のさしあたりの目的を最大公約数的にいえば、以下のようになろう。もちろん、このような方向は固定的なものではなく、ひとつの暫定的な「網打ち」にすぎないし、各自さまざまな読みかえが可能であるし、読みかえてほしい。
哲学、法学、言語学、歴史学、経済学、経営学、精神医学、文化人類学などあらゆる西欧 から輪入された学問領域を、世間という観点から批判的に見直す学会をめざす。
細分化されタコツボ化された学問領域や、(学会という世間の)つまらぬしきたりなどといった、いわゆる「アカデミズム」にとらわれない「出入り自由」な学会をめざす。つまりゆるやかであたらしい「知のネットワーク」をめざす。
なによりも大事なことは、「隠された構造」である世間を対象化すること。つまり自らの存在(実存)を対象化しうるような内容をめざす。
1998年10月
<呼びかけ人>
清沢 洋(日本学園高校・文学)
近藤 直也(九州工業大学・文化人類学)
佐藤 直樹(九州工業大学・刑事法)
瀬田川 昌裕(秋田経済法科大学・法社会学)
山田 晋(明治学院大学・社会法)
(あいうえお順・所属は設立当時のものです)
活動内容
1.年2回(7月頃、11月頃)研究発表大会を開催しています。
大会の約一か月前に詳細をお知らせいたします。
2.論文集「世間の学」を不定期刊行しています。
代表幹事 山本陽史(山形大学)2013年7月〜2016年6月
2016年7月〜2019年6月
2019年11月〜
常任幹事 佐藤直樹
常任幹事 瀬田川昌裕
常任幹事 新矢昌昭
常任幹事 高橋靖典
年会費
3,000円
入会後、最初の大会の受付時より徴収いたします。
日本世間学会会則
第1 条 (名 称) 本会は日本世間学会と称する。
第2 条 (目 的) 本会は世間の諸現象を理論的に研究することを目的とする。
第3 条 (事 業) 本会はその目的を達成するため、つぎの事業を行う。
1. 研究会等の開催。
2. 会報その他の出版物の発行。
3. 内外の研究機関との連絡および交流。
4. その他本会の目的を達成するために必要な事業。
第4 条 (会 員) 本会はその目的に賛同する会員によって構成される。
2. 会員は所定の会費を納入するものとする。
3. 引き続き3年間会費を滞納した者は退会したものとみなす。
但し、再入会を妨げない。
第5 条 (総 会)総会は本会の最高決定機関であり、すくなくとも年1回を開催される。
第6 条 (役 員)本会は会務を処理するための役員として、代表幹事1名、幹事若干名、会計監査1名をおく。
2. 役員会は、代表幹事、幹事、会計監査によって構成される。
3. 役員は総会によって選任される。役員の任期は3年とし、その再任を妨げない。但し、代表幹事の再々任はおこなわない。
第7 条 (事務局)役員会は本会の事務執行のため、事務局をおく。
第8 条 (会 費)会費額は総会において決定する。
第9 条 (改 正)本会則を変更するには総会出席会員の3分の2以上の同意を必要とする。
第10条 (付 則)本会則は1999年6月27日より施行する。
所在地 東京都豊島区西池袋1-5-11イトーピア池袋メトロポリタン405堀込方
日本世間学会
(事務局)〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-5-11
イトーピア池袋メトロポリタン405 堀込方
事務局代表 堀込香織