酒場案内のエッセイを出します 呑み屋も世間学の領域ということで……

会員の高橋です。前回の大会で発表の場をいただきまして、大変にありがとうございました。
 さてわたくし、このたび草思社さんとご縁があり、以前文芸誌に筆名で連載した、東京の酒場案内を、単行本として上梓することになりました。『東京名酒場問わず語り』というタイトルです。
 呑み屋のガイドブックなぞこの世間学会とは関係が……と思われるかもしれませんが、メニューや営業時間を羅列した本ではありませんで、「酒場で独酌」という近代になって日本人が手に入れた沈思黙考スタイルの立場としてあれこれ綴ったつもりでございます。
 ご承知のように社会学はとても幅の広い事象を扱う分野でございます。『酒場の社会学』(高田公理 著)、『居酒屋の戦後史』、『居酒屋ほろよい考現学』(共に橋本健二 著)といった先達の書もありますし、酒場は人間観察や、空間で醸される空気の観察に恰好の場であることはご同意くださると思います。
 いつぞや、佐藤直樹先生をわたくしの贔屓の居酒屋にお連れしたことがあります。座られてすぐに先生は「町内会の銭湯だ」とおっしゃいました。さすがです。乾杯のあとはローカルと呼ばれる英国パブへと話がつながっていきまして、いずれも世間そのものにほかならないということ、人間と都市に欠かせない装置であることの確認が出来た次第でした。
 言い訳がましく申しましたが、ご興味を持ってくださりお手にとっていただけましたら有難く存じます。ちなみに筆名の奥 祐介は、「よぉくゆう」すけの意でして、いい店・いい人・いい情報の良さを伝える。悪口は書かない。気に入らなければ無視すればいい、と生意気を決めております。
 わが人生そうそうあることではございませんで(笑)、失礼ながらご案内させていただきました。発売は2月末の予定です。

2023年2月10日          
高橋靖典(奥 祐介) 拝